病児保育・病後児保育とは


<子どもの病気は働く親の最大の関門>

子どもの病気、どうする?

子どもの病気は、働いている親にとって最大の難関ともいえるでしょう。病気の子どもは保育所に預けることができません(37.5度以上の発熱で、預かってもらえない場合がほとんど)。そこで、病気が治るまでは子どものそばで世話をしなければなりません。とはいえ、親も社会人の顔を持っています。その日にどうしても出席しなければならない会議や打ち合わせ、作業などがある場合、アポイントをずらすことができる人の方が少ないかもしれません。

 

夫婦共働きなら、交代で休みを取ることもできますが、子どもが小さいうちは病気続きで、「あっという間に有給休暇が無くなった!」という声を聞きます。現在では「看護休暇」という制度もありますが、これもわずか年に5日間。0歳、1歳の子どもでは、一度熱を出すと3、4日お休みになることも珍しくありませんし、水疱瘡などの感染症にかかれば1週間はお休みしなければならないので、看護休暇もあっという間に吹っ飛びます。

 

そういったとき、そばに祖父母など安心して子どもを預けられる人がいればお願いしたいものですが、地方出身の夫婦などではなかなかそうもいきません。ガイド自身、どうしても動かせない取材のアポイントがある日に子どもが発熱し、遠方に住む祖母に新幹線で来てもらったことがあります。それでなんとか乗り切れたのでよかったのですが、今日まで、ハッキリ言って綱渡りの連続でした。

 

幸い、その後はそういった急な病気になる子どももなく、仕事を続けることができましたが、油断しているとたまに病気になって慌てたことが何度かありました。子どもが病気になったときでも安心して預けられる人や施設がそばになければ、しっかり働き続けることができない、というのが実感です。

 

そんなときのために、あらかじめ知っておきたいのが「病児保育」と「病後児保育」です。

 

<病児保育と病後児保育はどう違う?>

「病児保育」とは、一般的には親が就労しているなどで保育所に通っている子どもが病気になったとき、親が仕事を休めない時には親に変わって病気の子どもの世話をするという意味で使われています。また、そういった子どもの保育を行う施設について呼ぶ場合もあります。「病後児保育」とは、病気は治っているものの、まだ本来の状態に戻っておらず、普通の保育メニューを受けるのが厳しい回復期の子どもを親に変わって世話をするという意味で使われています。

 

これは厚生労働省の「乳幼児健康支援一時預かり事業」として補助金がついて行われている事業で、基本的には回復期の「病後児」を対象にしていますが、中には「病児」についても条件付きで見てもらえる施設があるので、確認してみましょう。施設には「医療機関併設型」「保育園併設型」「単独型」といった3つのタイプがあり、もっとも多いのは小児科などの病院に併設された「医療機関併設型」。医師が常にそばにいるという安心感があります。

 

全国病児保育協議会のサイトでは、病児保育を実施している全国の施設を網羅しています。また、住んでいる自治体のHPなどでも紹介されていることがあるので調べてみましょう。

 

全国的に施設は増えつつありますが、実際にそこで預かれる子供の人数はかなり限られています。なんといっても病気の子どもですから、保育園のように毎日一度に何十人もの子どもを預かるわけにはいかないのです。1施設でせいぜい5名程度のところが多く、人口に対して足りているとは言えません。

 

ガイドは、住んでいる自治体にある3ヶ月の病児保育に何度も依頼しようとしましたが、双子だったこともあり、枠が少なくて受け入れてもらえず、結局、5年間で一度も預けることはできませんでした。

 

 

<病児・病後児施設の代わりになるもの>

最近では、病児・病後児を自宅で世話してくれるスタッフを派遣するNPOが増えてきています。先駆けとして、最も有名なのがNPOフローレンス 。首都圏を中心に、会員登録した家庭の子どもが病気になったとき、朝の連絡でも駆けつけてくれるというサービスで、働く親に注目されています。いくつかのNPOがやはり同じようなサービスを各地で展開していますので、探してみましょう。

 

やはり自分に変わって大切な子どもの世話をしてもらうのですから、事前の説明会などには必ず参加し、充分に納得した上で登録するようにしましょう。

 

子どもが病気になっても預ける場所があることは大切なことではありますが、考えてみれば、本来は、子どもが病気になったら休んでも大丈夫な社会を作っていくことも必要なのかもしれません。今の日本ではまだまだ難しいシステムかもしれませんが、ワークシェアリングなどを上手に導入しながら、そういったシステム作りができるようになればと思います。病気で不安なのは、親はもちろんですが、当事者の子どもはもっと心細いはず。そんなときに大好きなママやパパがいつもそばにいてくれる安心感を感じてほしいと思うのです。この分野、まだまだ今後、充実が望まれるところですね。

 

出典: All About

 

 


病児保育の概念

病児保育とは、 単に子どもが病気のときに、 保護者に代わって子どもの世話をすることを意味しているわけではありません。 本来子どもは、 健康なときはもとより、 病気のときであっても、 あるいは病気のときにはより一層、 身体的にも精神的にも、 そして社会経済的、 教育・倫理・宗教的にも、 子どもにとって最も重要な発達のニーズを満たされるべくケアされなければならないのです。 つまり、 健康であっても病気のときであっても、 子どものトータル・ケアが保障されることが、 子どもの権利条約においても摘されているところです。

 

このように、 病児保育というのは、 病気にかかっている子どもにこれらすべてのニーズを満たしてあげるために、 専門家集団 〔保育士、 看護婦 (士)、 栄養士、 医師等〕 によって保育と看護を行い、 子どもの健康と幸福を守るためにあらゆる世話をすることをいいます。

 

病児保育事業は、 国の施策としては病児デイケアパイロット事業にはじまり、 病後児デイケア・モデル事業をへて、 平成7年度から市町村補助事業として 「乳幼児健康支援デイサービス事業」、 そして翌年事業名が再度変更され、 「乳幼児健康支援一時預かり事業」 として全国各地で展開されています。 このように病児保育事業の名称は、 国による制度の変遷とともに変わり、 ともするとその理解に混乱を生じている可能性があります。

 

「病児保育」 という場合には、 先に示した通りに広義に解釈して欲しいと思います。 すなわち、 基本的には母親の就労の有無に関わらず、 子どもの自宅療養はもとより、 病児保育室におけるケア、 そして入院治療を受けている子ども達の生活援助の総てを対象として考えるべきものと思います。 その意味では、 小児病棟における保育士たちによる病児への援助も、 広義の病児保育といえます。 しかし、 一般的に病児保育というと、 母親が就労等のために、 保育所に通っている子どもが病気をした際に、 親の就労の継続性を確保するために、 一時的に病児の世話をする狭義の保育を意味しているのが現状です。

 

当初の、 国の施策による 「病後児デイケア」 は、 保育所に通所している病気の回復期にある子どもが、 保育所における集団生活にはまだ適さない場合を対象に、 育児と就労の両立支援を目的としたものでありました。 その後、 「乳幼児健康支援デイサービス」 「乳幼児健康支援一時預かり事業」 に変遷したわけですが、 この名称の変更は、 基本的には 「病後児デイケア」 と同義ですが、 保育所に通園している子どものみならず、 在宅の乳幼児が病気をしたときにも利用できるように対象が拡大されているのが特徴で、 “乳幼児健康支援”という名称もこの意味でつけられたものです。

 

出典: 全国病児保育協議会

 

 

 

 


<病児保育施設の種類と特色>

病児保育は体調に不安がある子供を預かる以上、万一の急変に備えることが必要であるし、また職員の質を一定のレベルに維持する意味も含めて(最低限の人員数を確保し技術の向上のための教育、研修が可能でなければならない)、安定した経営母体を必要とし、運営が自治体などによる公営施設であることが望ましいと思われます。

 

しかしながら公的補助がないために、運営存続が困難な民間病児保育施設も少なくなく、運営維持されている施設も併設施設があるためにかろうじて存続可能であったりと(例えば医療施設併設なら、クリニックなどからの資金投入により損失補填が可能である)、運営は意識だけが先行している状況です。

 

現在は全国病児保育協議会の働きで国も病児保育に対して積極的に取り組む方向にあり、健康21プランを通して公的補助の枠も年を経るごとに拡大してきていますが、今後とも私たち病児保育に携わるものが、世論に向かって病児保育の必要性を積極的にPRしていくことが重要です。

 

①医療施設併設型

病院、診療所がベースとなって開設されます。

医師が常駐に近い形で携れるため形としては一番望ましいと思われます。(しかし、後述する全ての形態について言えることですが、採算は全く合いません。)

個人経営の病院、診療所が開設する場合は黒字部門からの資金調達が必須です。そのかわり経営者の自由な発想が生かされる運営が可能であり、利用者の安心感や理解を得やすいということが言えます。枚方病児保育室(枚方市)、藤本小児病院キッズケアルーム(大分市)、むかいだ小児科キッズハウス(愛媛県伊予郡)、山陽ちびっこ療育園(岡山市)等が該当します。

 

公立病院(自治体)が開設する場合はそれなりに制約があります。それは従業員の確保、給与設定(恩給、退職金の確保)など、問題が多く、また求心力がはっきりしないと職員全体のモチベーションも下がり、いわゆる「お役所仕事」となる可能性があることです。しかし一方では、制度の変更にすばやく対応でき、行政と足並みをそろえてやっていけるなど、多くの利点もあり、これを生かして運営すればすばらしい保育環境を作ることが出来るのです。枚方市立病児保育園(枚方市)等が該当します。

 

②乳児院併設型

乳児院は、

本来24時間対応で業務を行っていることもあり、保育、看護に対して熟練した職員を配置しており、従来より病児についての対応もある程度行ってきているのが実状です。特にニーズの高い施設において乳児院併設型病児保育が始まっていますが、この場合嘱託医の確保がしっかりとなされる必要があります。清心乳児園(福岡県三井郡)等が該当します。

 

③保育所併設型

保育所併設型は平成12年度より事業費補助の新規対象になりました。

保育所における病児保育の扱いはこれまで必ずしも肯定的と言えるものではありません。これまでは、発熱した子供の状況を見て親に連絡するかどうかを判断することが唯一できることでしたが、病児保育施設の併設が可能になったことで保育士の悩みはとりあえず解消されます。

 

しかしながら、これも乳児院併設型と同じく嘱託医の確保がなされる必要があります。また父母からのコンセンサスを得ることが大事です。

 

その他問題点としては、周辺の保育所との兼ね合い(病児が受け入れられることにより他の保育所とのサービスの格差が生じ児童が集中する可能性がある)、担当保育士の教育、意識改革(新規採用よりは従来からの職員が兼任の可能性が高い)について留意する必要があるでしょう。

 

④単独型

病児保育のニーズを痛感する父母が共済会を設立しこれを母体に始まった病児保育です。

広島市のサクランボ病児保育室は昭和51年9月からの開設ですが、当初はその公共性、ニーズがなかなか自治体にも理解されず苦しい時期があったと聞きます。嘱託医の住田静子先生をはじめとするスタッフの地道な努力が実を結び現在に至っています。

 

しかし、母体が父母の会費や寄付金、協賛団体の援助金に頼る部分もあり経営的には最も厳しいものかもしれません。ちなみに現在勤務されている看護士さんのパート代は時給850円(平成12年末時点)ということで、かなり職員の善意に頼る部分も大きいようです。

 

⑤センター型

単独型の一種ではあるが、自治体がニーズを認めて開設した病児保育施設で保険センターなどの中に一角を設けています。

 

民間の単独型と異なり経営的な基盤がしっかりしています。また、地元医師会との連携も作りやすく、医師のローテーションなどをシステムに組み込むことも可能となります。

 

医師会の中に病児保育に理解のある医師がいて、その先生が求心力となる必要があります。

 

いずれにしても、ある程度大きな都市で可能な形態です。池田宏先生が中心となって開設された、乳幼児健康支援デイサービスエンゼル多摩(川崎市)がこれに該当します。

 

⑥訪問型

派遣型とも呼ばれる方式で児童だけでなく、

 

保護者の病気、産後の体調不良についても対象を広げています。直接保育士、看護士が家庭に訪問し保育等を行うというもので、平成12年度より認められるようになりました。

 

この形態は事業所のスペースを必要とせず一見安上がりですが、介護保険における訪問サービスと同じく単価が安いためやはり採算を合わせることがなかなか困難です。

 

緊急時の対応、労務管理の面(勤務素行を確認する手立てがない)から言ってもいろいろと解決しなければならない問題の残る形態です。

 

出典: 病児保育のすすめ

 

 


病児保育施設の設立に潜むリスク

近年、育児支援のニーズの高まりに応える形で、全国各地に病児保育施設が設立されるようになってきました。しかし、施設基準等の詳細が未だ定められていない現状では、それぞれの施設のモラルで、あるいはその地域の自治体、保健所の指導下に(その地域のルールに則って)設立されており、設立のプロセスにこれという正解、お手本がないというのが実情です。施設建設の認可にあたっては、例えば出入り口、厨房やトイレの位置など細かいところにまで指導が入る地域もあれば、ほとんど形式上のチェックのみで指導らしい指導もないような地域もあると聞きます。

このような状況下では非常に警戒すべきことがあります。それはこれから設立しようとする施設に対して、既存の病児保育施設が安易なアドバイスをすることです。

病児保育の設立、運営には他項でも述べているように、多額のコストが掛かります。この点から既存施設が新しく設立する施設に対して、できるだけコストを掛けずに済ます方法をアドバイスすることは当事者にとっては親切な行為であり、そのために新しい施設の経営が成り立っていくなら一見正論のようにも思えます。しかしそのアドバイスの中には、「この程度のことをやっておけば監査が入っても大丈夫」というような「抜け道」的なものも含まれているのではないでしょうか。コストをできる限り削減し、必要最小限の設備でできあがった新しい施設が、もし事故を起こしたらということを考えると、既存の施設が病児保育の普及を願って、新しい施設に対して親切心で安易にこのような「抜け道」を教えたことが逆に仇になり、結局、未だ地位が確立されているとは言えない病児保育事業全体の価値を下げることになりはしないかと心配です。

少なくとも新しく始める病児保育施設は、既存の施設を越えるものでなければならない、あるいは越えるべく努力すべきであると考えます。そのためにコストが掛かったとしても、それは単に施設に対してリスクを減らすための投資というだけでなく、病児保育事業全体が世間に認知されていくための投資という解釈ができるのではないでしょうか。何より忘れてはならないのは、指導や監査を切り抜けることが事業の目的ではなく、利用者に満足のいくサービスを提供できるようにすることが目的なのです。役所や保健所を「抜け道」を使って丸め込んだとしても、利用者に対して胸を張れる仕事をしているのかどうか、それが私たち病児保育施設にとって絶対に忘れてはならないことなのです。それができない施設は、病児保育事業に手を染めるべきではありません。

これから病児保育施設を設立しようとされるならば、是非、こんなことも立ち止まって考えてみてください。

 

出典: 病児保育のすすめ

 

 


<病後児保育>

病気の子ども(厳密には、緊急な手当がすんで回復期にある病後の子ども)は、保育園に預けることができません。このような場合は、区が委託している医療機関に、子どもを預けることができます。(2004年から始まった制度です。)

 

実施場所:2005年現在、文京区内では、白山の保坂こどもクリニックだけです。

     文京区白山 5-27-12 (農学部キャンパスより徒歩20分)

     電話 03-5976-0641

対象  :かぜなど日頃かかる病気や水ぼうそう、風疹などの感染症の病気の回復期で入院治療の必要はないが、安静が必要な区内在住の生後4か月から小学校3年生までの児童   

利用日 :月曜日~金曜日(国民の休日、年末年始、医療機関の休業日を除く)

利用時間:朝 8:30~夕 5:30

利用定員:1日4名まで

利用期間:1回につき原則7日間以内

利用料 :1日3,000円

食事等 :昼食・おやつは、各自でご持参ください。

       医療機関で対応した場合は実費負担となります。

手続き :事前に、区または実施機関で「利用登録」をしてください。実際に利用する日の前日までに、直接電話等で予約をしてください。

http://www.timelyhit.ne.jp/hosaka/hoiku.html 

http://www.city.bunkyo.lg.jp/kusei/hoiku/byougoji.html 

 

出典: 東京大学で子育て