現在の保育園探し「保活」を巡る状況は、特に都市部では、相変わらず厳しい状態が続いています。先日、私どもの会社の女性スタッフのお嬢さん(1歳4カ月)も、この4月から認可保育園への入園が決まったのですが、入園決定通知を受け取った郵便受けの前で泣き崩れたそうです。
高校入試や大学入試は学力を上げるために勉強時間を長くしたり、塾に通ったりするか、希望の学校を下げれば入学することはできます。しかし、保育園は行政に申請し、あとは結果を待つしかありません。そして、入園が決まった親も落ちた親も何がよかったのか、または悪かったのかは、審査過程が明らかにされないのでわかりません。
自分の子どもを預けている施設がブラックなのか、ホワイトなのか気になるとは思いますが、たとえわかったとしても、現在のように待機児童があふれているような状況では、自分たちの入れたい施設に入れられるとは限りません。「ちょっと不安だな?」とか「大丈夫かな?」と思っても施設が選べないのが実情なので、入園が決まれば、入園させるしかないでしょう。
基本的に認可された保育施設は子どもをどこに預け入れても最低限のレベルが保障されるように「保育所保育指針」が定められています。この指針は厚生労働省が告示する保育所における保育の内容に関する事項およびこれに関する運営に関する事項を定めたものです。本来ならば、この指針の中に安全に関する項目も明確に規定されているものだと考えると思います。原文をそのまま引用してみましょう。
(2)事故防止及び安全対策
ア 保育中の事故防止のために、子どもの心身の状態等を踏まえつつ、保育所内外の安全点検に努め、安全 対策のために職員の共通理解や体制作りを図るととともに、家庭や地域の諸機関の協力の下に安全指導を行うこと。
イ 災害や事故の発生に備え、危険箇所の点検や避難訓練を実施するとともに、外部からの不審者等の侵入 防止のための措置や訓練など不測の事態に備えて必要な対応を図ること。また、子どもの精神保健面における対応に留意すること。
以上が事故防止と安全対策について記されている部分なのですが、具体的に何をどのようにしなければならないのかがわからないと思います。つまり、この指針では保育施設は具体的な事故防止策も安全対策も打つことができないでしょうし、たとえ打ったとしても日本国内にあるすべての認可保育施設で一定以上の安全水準を実現することは難しいでしょう。現在、保育所保育指針は改定中ですので、新しい指針ができたらチェックしてみてください。
2015年4月1日、子ども子育て支援新制度が始まりました。法律が新しくなり、いろいろな仕組みも新しくなりました。保育施設の運営基準も新たに定められ、その中には「事故発生の防止及び発生時の対応」についても明記されています。自分の子どもを預けている施設がブラックかホワイトかお知りになりたい方は、この基準を施設の方が熟知していて、実際に施設で実行しているかどうか確認してみればよいのではないでしょうか。
それ以外にブラックかホワイトかの判別方法をいくつか記載しておきますので、参考になさってください。まず、園長が施設にあまりいないところは、園の内情や職員の状況などを把握できていない可能性があります。そのために職員間の意思疎通がうまくいっておらず、離職者が頻繁に出てしまうようなこともあります。職員の定着率が悪い施設は、職員間のコミュニケーションがうまくいかず、いらぬ事故を招いてしまう原因にもなりかねません。
そのほかには保育施設で起こってきた事故事例データが職員の頭に入っているかどうかも重要です。事故事例が頭に入っている職員は、保育現場でどこが危険な場所か、子どもがどのような状況になると危険度が高まるのかが具体的に想定できる可能性が高まります。
しかし、これは確認することが難しい項目だと思いますので、自分の子どもを預けている施設に職員向けの安全研修を実施しているかどうかを確認してみてください。
認可外の保育施設は、認可の施設に比べて危険なのではなく、保育の質や安全面のバラつきが大きいと理解した方が適切だと考えます。認可外の保育施設でも丁寧な保育や安全面の対策をした施設もあります。
保護者が保育施設を探すときに安全対策に関する質問をしない方も意外に多くいるみたいです。利用者が施設側に安全を問わない限り、施設の安全は向上していかないだろうと私は考えています。利用者側も施設側も安全について同じ方向を向いて考えることが大切なことなのです。
(株式会社アイギス代表取締役社長・脇貴志)
社会福祉法人・学校法人の事故やトラブル対応アドバイザーサービスを展開。著作に『事故と事件が多発するブラック保育園のリアル』(幻冬舎)がある。